アルツハイマー病の症状と原因・治療法

アルツハイマー病の症状

アルツハイマー病は、狭義のアルツハイマー病(65歳未満発症)と、アルツハイマー型老年認知症(65歳以上の発症)とに分けられますが、本質的には同じ病気となります。

症状の進行具合としては、まずは記銘力が低下していき、物忘れがだんだんと激しくなってきます。初期の段階では、人格は保たれて、対人関係もそつなくこなします。そして、態度や礼節なども保たれることが多いのが特徴です。

しかし、さらに症状が進行してくると、見当識の障害が現れてきます。見当識とは、自分がどこにいるか?今何時なのか?目の前に居る人は誰なのか?等の認識力のことです。認識力が低下すると、今日の日時が直ぐに思い出せなくなったり、簡単な暗算もできなくなってきます。

また、外出した際には自宅に帰れ無くなる(迷子)ことがあります。これは、空間を認知することの障害によるものです。

アルツハイマー病では、失語、失行や失認を伴いやすくなります。例えば、衣服失行では、服を着る順番が分からなくなり、裏や表、上下(シャツとズボン)をどの様にして着衣すれば良いのかが分からなくなってしまいます。

また、稀な症状ではありますが、パーキンソン症状や不随意運動、痙攣(けいれん)を生じることもあります。しかし、大多数で運動機能は正常であることが多いのが特徴です。

アルツハイマー病の進行度

アルツハイマー病はいつのまにか始まってしまう病気です。その症状は徐々に進行していくのですが、進行度は通常、以下で説明する3期に分けて考えられます。

第1期

大脳皮質の機能が全般的に低下していきます。症状としては、最近の出来事を忘れてしまったり、今自分が行っていたことを忘れやすくなってしまいます。その一方で、昔の出来事はしっかりと記憶されており、記憶はよく保たれています。

精神面では、全体的な意欲が低下し、怒りっぽい性格になります。不安感や焦燥感、抑うつ状態も現れてきます。また、見当識も少しずつ失われていきます。

それでも、日常生活においては独立した活動が可能で、家族の負担もまだ大きいものではありません。

 第2期

大脳皮質の萎縮(いしゅく)が進行し、局所的な症状が徐々に現れてきます。

記憶や記銘力などが著しく低下してしまい、言葉(語彙力)も忘れてしまいます。その結果、言葉を別の言葉に言い換えたりすることができなくなり、理解力も障害されるために、会話も成り立たなくなってきます。

また、服を着たりする行動も一人では行えなくなるなど、一定の動作をすることができなくなってきます。場所や時間、月日の認識もできなくなり、周囲への関心も薄くなってきます。そして、何かをしたいという意欲も無くなります。

やがては落ち着きも無くなり、夜間の徘徊(はいかい)が始まります。この時期になると、周囲の介助や監視が必要になってきます。

第3期

進行度が第3期になる頃には、脳機能は著しく障害され、人間らしい行動が不可能になってきます。

ベッドの上で寝たきりになったり、排泄行為も自力で行うことができず、尿便を失禁します。また、不潔行為も目立ってきます。

アルツハイマー病がこの段階まで進行してくる頃には、家族や周囲の負担も大変なものとなっています。また、アルツハイマー病と併発することの多い「肺炎(誤嚥性肺炎)」を患って亡くなる方も多くなってきます。

肺炎が起こりやすい理由は、症状が進行することで「食べ物や飲み物を飲み込む能力」が低下していくためです。食べ物を食道に送ることができずに肺に食べ物が入ってしまい、肺炎となってしまうのです。

アルツハイマー病の原因

よく、アルツハイマー病は遺伝が関係していると考えられることが多いのですが、実際には、少数で優性遺伝を示しますが、大部分で遺伝はないとされています(例外もあります)。

脳を顕微鏡で確認してみると、大脳全体が萎縮して、アルツハイマーの原線維変化や老人斑と呼ばれる異常を確認することができます。

アルツハイマー病は、未だにはっきりとした原因が特定できていない病気でもあります。不明な点が多いのも事実なのですが、病気を発生しやすくする因子はいくつか確認されています。

  • 高齢
  • 家族暦がある
  • 血清にアポリポたんぱくE4をもっている

上記の因子の内、アポリポたんぱくは、血中ではコレステロールを運搬するはたらきを持っていますが、脳の中では神経細胞を支配する細胞から分泌されており、神経細胞の補修に携わっています。そして、アポリポたんぱくにはE2、E3、E4の3種類が確認されています。

そして、遺伝子にはこれらのアポリポたんぱくのどれか2つがペアになっています。例として、E2-E2やE3-E4等です。

この様にして、E4を「1つだけ」持っている人は、人口の20%を占めており、アルツハイマー病になる危険性は、通常の2~4倍になるといわれているのです。

また、E4を「2つ」持っている人、つまり「E4-E4」というペアの遺伝子を持っている人は、アルツハイマー病になる危険性は、通常の5~15倍になってしまいます。尚、このペアの遺伝子を持っている人は、人口の2~3%程といわれています。

アルツハイマー病の診断

認知症が徐々に進行していく臨床症状と併せて、以下のような補助検査を行い、アルツハイマー病であるかどうかの診断を行います。

脳波

初期の段階では正常であることが多いのですが、やがてα(アルファ)波が減少して、遅いθ(シータ)波が混在して増えていきます。そして、末期にはすべての脳波で遅いθ波となり、やがては平坦な波形となっていきます。

CT・MRI

初期では年齢相応の変化を確認するだけですが、アルツハイマー病の発症から1~2年を過ぎる頃から、脳の萎縮が見られるようになります。

SPECT(脳血流シンチグラム)

CTやMRIで脳の萎縮が明らかになる前から、脳血流の低下が目立ってきます。特に、頭頂葉、側頭葉で低下が顕著となってきます。

アルツハイマー病の治療

この病気において、日常的に気をつけることは、昼と夜のリズムを大切にすることです。

まだ明るいうちはなるべく外出し、公園などで散歩します。そして、暗くなったら早めに床につかせます。そして、患者の言うことには、基本的には逆らわないことが重要です。

そして、昔の記憶に結びつくようなもの(写真や人形、服、趣味のカメラ等)を「思い出ボックス」として箱の中にまとめておき、不安や焦燥感から興奮してしまったときに見せることで、落ち着きを取り戻すことがあります。

アルツハイマー病の投薬治療

アルツハイマー病においては、脳内の「アセチルコリン」と呼ばれる科学物質が低下することが知られています。

この成分は神経伝達に重要な成分なのですが、このアセチルコリンを分解する酵素の「アセチルコリンエステラーゼ」を阻害する薬が作られました。それが「ドネペジル」と呼ばれる薬剤です。

この薬を利用することで、認知機能と重症度が良い方向に改善されることが確認されているのです。

しかし、この薬を利用すれば、いつまでも効果があるというわけではありません。残念ですが、やがては悪化してしまう時期がやってくるのです。

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