脳出血・脳溢血(のういっけつ)について

脳出血は頭蓋内で脳の血管が破れ、勢いよく血液が出てくるものです。脳内出血と、くも膜下出血に大別できます。

脳内出血

脳内出血は脳内の細い動脈が破れ、強い勢いで血液が脳の中に流れ込むために脳が破壊されるものです。脳出血の際には血圧が200mmHgを超えることが多く、強い圧で血液がやわらかい脳組織に噴出し、その時点で脳が破壊されて出血が完成します。

脳出血は活動時など血圧が上がっているときに生じることが多いのが特徴です。実際に破れる動脈は300μm程度の細い動脈です。小脳の出血では起立・歩行などの運動失調や平衝障害がみられます。

症状

突然、右あるいは左に運動まひや感覚まひが生じ、多くの場合、意識障害を伴います。症状が進行性の場合には大出血となり、脳のヘルニアを起こして(頭蓋骨に囲まれた脳に出血やむくみが生じると逃げ場がないので下に開いた大後頭孔へ押し出される。これがヘルニアで、その結果、脳幹が骨に押しつぶされ、呼吸中枢がまひする)、呼吸が停止します。

診断

CTでは最初から白く出血が見え、診断が容易にできます。精密検査のためにMRI、SPECTをおこなうのは脳血栓症と同じです。

治療

急性期には脳の浮腫を抑えるグリセオールを点滴し、脳ヘルニアが進行するようなら頭蓋骨を一部取り、圧を逃がすことも必要になります。慢性期には血圧のコントロールや動脈硬化の伸展をふせぐ治療をします。

リハビリも早期から始めますが、脳血栓症に比べるとまひの回復が遅れます。これは脳組織が物理的に破壊されているためです。

初期には完全な弛緩性まひをみることが多く、この段階では足が重みを支えることができないので積極的なリハビリはできません。脳出血では5年後生存率も低く、多くは肺炎や心筋梗塞などで亡くなります。

予防

脳出血の予防でいちばん大切なことは、血圧をコントロールすることです。最高血圧が160mmHg、最低血圧は95mmHgを超えないように注意する必要があります。

くも膜下出血

脳の動脈は、太い内頸動脈と脳底動脈が頭蓋内に入って動脈の輪(ウィリス輪という)をつくります。さらにここから前大脳動脈、中大脳動脈、後大脳動脈が分岐していきます。

これらの太い動脈の分岐部には動脈のこぶ(動脈瘤)ができやすく、これが血圧の上昇などで破れたものがくも膜下出血です。動脈瘤のある場所は、脳の底部で脳の外にあるため、出血は脳の表面に広がります。

50歳以下のくも膜下出血は先天的な動脈瘤によることが多く、60歳以上の場合は動脈硬化症から動脈瘤が生じることが多いのが特徴です。

症状

くも膜下出血の特徴は強い頭痛です。突然いままでに経験したことのないような頭痛が始まります。これに先だって、がくんと脱力発作を起こすこともあります。痛みは始まると朝も晩も同じ強さで続きます。

多くの場合にはただちに意識障害が進行し、1時間以内に呼吸がとまることもあります。くびはカチカチにかたくなり、眼底には網膜の前に出血が認められます。破れた動脈は収縮し、その結果、脳梗塞を併発することもあります。

診断

CTでは脳と頭蓋骨の間に白い出血があります。髄液検査では血性の髄液が認められます。血管造影では、破れた動脈瘤を見つけることができます。最近では脳ドックで未破裂動脈瘤がしばしば見つかるようになりました。

治療

破裂した動脈瘤は脳外科で開頭手術をし、クリップをかけてふたたび出血しないようにします。破裂動脈瘤を手術せずに放置しておくと、1カ月後の死亡率は50%に達するとされています。

近年では血管内から動脈瘤内にファイバーを送って閉塞し、治療することも可能になりました。

ただいずれの方法も部位や、年齢、また動脈瘤の状態によって手術に危険性があり、術中・術後に死亡することもあります。未破裂動脈瘤を放置した場合の破裂の頻度は年間1%以内とされ、十分なインフォームド・コンセントが必要です。

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