脳から生じるめまいの種類と特徴

脳が原因で起こるめまいは、耳鳴りや難聴、耳閉感を伴いません。めまいも耳から生じるめまいに比べると軽いことが多いのです。しかしながら、脳の障害による特徴的な症状があらわれます。たとえば、ものが二重に見える、顔や手足がしびれる、力が入らない、手がふるえるなどの症状です。

また、耳から生じるめまいは何度も何度も同じめまいをくり返すことが多いのですが、脳から生じるめまいは、いままでに経験したことのないようなめまいであることが多いのです。

検査

脳にめまいの原因があると疑われる場合には、耳鼻咽喉科でおこなう検査のほかに、以下のような検査をおこないます。

神経学的検査

感覚、運動機能、刺激に対する反応をいろいろな方法で調べます。その反応によって、脳に原因があるのか、末梢の神経に原因があるのかなど、さらに脳のどこが問題かなどを絞り込むことができます。

MRI

磁気を利用して脳の状態を調べます。脳梗塞があれば容易に診断をすることができます。

MRA

MRIと同じ機械で脳の血管の状態を調べます。血管のどこが細くなっているかなどの詳細をあきらかにすることができます。MRIもMRAもX線を使わないので、人体に対する影響はなく、苦痛もありません。

脳波

てんかんからめまいを起こすことがあり、脳波を調べます。

疾患

脳が原因のめまいを起こす疾患には次のようなものがあります。

脳卒中(脳梗塞、脳出血)

脳卒中によって平衡感覚の経路のどこかが障害を受けると、めまいが起こります。脳卒中によるめまいは通常2~3時間、短くても20~30分間は続くのが特徴です。めまいの症状や程度は梗塞や出血が生じた場所によって異なります。

たとえば脳幹の前庭神経核という、平衡感覚が集まる部分の障害では強い回転性のめまいが起こりますし、大脳皮質の障害では揺れるような、比較的軽度のめまいですみます。

脳卒中によるめまいの治療は、脳卒中そのものに対する治療に準じます。いずれにせよなるべくすみやかに医療機関を受診してください。

椎骨脳底動脈循環不全

大動脈から分岐して脳、特に脳幹や小脳へ血流を送るのが椎骨動脈の脳底動脈です。この血管の血流がわるくなるとめまいを起こします。このめまいの多くは20~30秒でおさまります。

椎骨動脈は頸椎の中を通っています。そのため、急に後ろを振り向いたり、天井を見上げたり、床を見たりする動作で血液循環がさまたげられてめまいを起こします。

特に生まれつき椎骨動脈が細い人、動脈硬化によって椎骨脳底動脈に狭窄がある人、老化で頸椎が変形し、動脈を圧排している人では起こりやすいのです。検査は、MRAによって椎骨脳底動脈の変化を調べます。

治療は、朝の起床時に勢いよくくびを屈曲しないように気をつけます。動脈硬化の危険因子のある人は、それをコントロールし、特に喫煙者は禁煙します。

てんかん

てんかんによるめまいは、耳鳴りとともに揺れるようなめまいが15秒ほど続きます。めまいは自然に治ることが多いのですが、時には手のふるえがあらわれたり、全身けいれんに至ることもあります。てんかんが疑われるときには、脳波の検査をします。

治療は抗てんかん薬で発作を抑えます。日常生活では禁酒し、12時前には床に入るように心がけ、睡眠不足にならないようにします。

てんかんについて詳しくはこちら

良性発作性頭位変換性めまい

頭を動かしたときだけに軽い回転性のめまいが起こり、20秒以内に自然におさまるのが特徴です。原因は多岐にわたります。たとえば、むかしはカナマイシンの注射による内耳の障害が原因であったこともあれば、更年期で神経が敏感になっていることもあります。

軽い脳幹梗塞やその後遺症で起こることもあります。また、過労、睡眠不足、酒の飲みすぎなどが原因になることもあります。

きちんとした検査のあとで診断された場合には安心してよいでしょう。めまいの専門医ほどこの病名を使わないものだといわれています。

予防法は急に振り返る、天井を見上げるなどの急な頭の動作を避けます。逆にめまいが起きる動作をくり返すことによってめまいが起こりにくくなることも知られています。

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