癲癇(てんかん)の原因と症状・治療方法

原因

てんかんは、大脳の神経細胞が過度に興奮することで発作を生じます。

てんかんはいろいろな原因によって起きる大脳の病気です。大脳の神経細胞が過度に興奮することでてんかん発作をくり返します。同じ全身のけいれんであっても、たとえば脳炎や低カルシウム血症のように一時的な発作はてんかんとはいいません。いっぽうで、脳炎の後遺症として2回以上のけいれん発作をくり返すようになれば、それはてんかんです。

てんかんにはいろいろな型があり、小児期の良性部分てんかんや小発作てんかんは予後がよく、10代のうちに自然に軽快します。これに対しレノックス・ガストー(Lennox-Gastaut)症候群は治療が困難で、精神的に荒廃していきます。このように病型によって予後が変わってくるので、正確な診断がとても大切です。

てんかんの病因はさまざまですが、ある程度は発病年齢と関連があります。乳幼児期では胎生期あるいは周産期の無酸素脳症、脳損傷、脳奇形、先天性代謝障害、髄膜脳炎後遺症が多いのです。小児期では遺伝素因のあるもの、周産期の脳障害、外傷性てんかん、20代以降は脳腫瘍、50代以降は脳血管障害が多くなります。

てんかんの頻度は日本人で50万~100万人といわれており、頻度の高い病気の1つです。てんかんはどの年齢でも発症し、約半数は10歳前、3分の2は20歳前に発病します。

診断

てんかんにはいろいろな原因があり、それぞれ治療法や経過が違うので、正確な診断がなによりも大切です。てんかんと診断するためには、以下の3項目が必要です。

  1. てんかん発作を観察し、その発作型を確認する
  2. 脳波で特徴的な所見をみとめる
  3. 発作を生じるほかの疾患を鑑別できる

検査

脳波

てんかんの診断のためには脳波で特徴的な所見をみることが必要です。発作がしずまっている時期には基礎の波形が不規則です。棘波といって、とがった波をみとめます。特に深呼吸をしたり光の点滅で刺激をすると発作波をみとめることが多く、診断がむずかしいときには薬を注射したり、睡眠時の脳波検査が必要なこともあります。

心電図

数秒間の心停止があるとけいれん発作を生じます。これをアダムス・ストークス発作と呼びます。てんかんと区別をするために、24時間の心電図や心エコーで検査をします。

血液検査

血液中のナトリウムやカルシウムなどの異常、低血糖、ミトコンドリア脳筋症などでけいれん発作を生じます。検査としては血算、赤沈、血糖値、電解質(ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなど)、一般血液生化学、アンモニア、乳酸、ピルビン酸、血液ガス分析、梅毒血清反応、シアリダーゼ、血清アミノ酸などを測定します。

髄液検査

脳炎や髄膜炎の検査が必要です。髄液の細胞数、たんぱく、糖などを調べます。

放射線学的検査

脳外傷、脳腫瘍、動静脈奇形、脳血管障害を調べます。具体的にはX線CT、MR、脳血流シンチグラフィー、MR血管撮影、さらに脳血管造影が必要になることもあります。

筋生検

ミトコンドリア脳筋症が疑われる場合、筋肉の小片を切って調べることが必要になります。

⇒アダムス・ストークス症候群(作成中)

症状

てんかんのおもな症状は、大きく全般発作と部分発作に分けられます。

全般発作

大発作(全般性強直間代発作)

発作の前に光がチカチカする感じ、焦げたようなにおいを感じます。大発作は強直性発作で始まります。目が上を向き、両腕を曲げたり、あるいは伸ばし、両脚はまっすぐに伸びます。約30秒するとガクガクとなる運動があらわれ、ただちに大きなけいれん発作(間代発作)となります。2~3分するとけいれん発作は小さくなり、いびきをかいて寝始めます。

大発作の部分的な症状、あるいは不十分な薬物療法や部分的な発作として、一過性に意識をふっと失う発作、数秒間声が出なくなる発作、突然どこにいるかわからなくなる発作、会話中に突然反応がなくなり同じ動作をくり返す発作、起立時に突然脱力を生じて転倒する発作、座っていて突然上半身をガクンと前に倒す発作、手や足をピクンと動かす発作、額がギューッと圧迫されるような頭痛発作、ピカッピカッと光を感じる発作などがあります。

部分的な全般発作

大発作の部分症状と考えられる症状ですが、いつも同じ発作型を示します。

欠神発作(一過性の意識消失発作)、ミオクローヌス(上下肢のビクッとするけいれん発作)、間代発作(ガクガクと上下肢のけいれんを示す発作)、強直発作(手足を強く伸ばしたり曲げる発作)、脱力発作(突然脱力を生じてくずれ落ちる発作)、無動発作(突然からだの動きがとまり、じっとしている発作)です。

未成熟な脳における発作

新生児や乳幼児では大脳が未成熟なために、特殊な発作になることがあります。

  • 良性新生児けいれん…生後2~3日の息とめ、あるいは間代発作。
  • 新生児良性ミオクローヌスてんかん…生後1~2年に起こるミオクローヌス発作。経過は良好。
  • ウェスト(West)症候群…3カ月から1年で発症。強直性けいれん発作、精神発達が遅くなる。脳波でヒプスアリスミアという、バラバラな波形が特徴
  • レノックス・ガストー症候群…1~6歳で発症。ミオクローヌス、起立時に力が抜けて倒れる発作、強直性けいれん発作、一過性に意識をふっと失う発作を見る。
  • 小発作てんかん…4~12歳で発症し、一過性に意識をふっと失う。次の瞬間には普通に話し出す。
  • ミオクローヌスてんかん…10~20歳で発症。何かを持とうとすると激しく手足が震える。

部分発作

意識障害のあるなしによる分類

  • 単純部分発作…意識障害を伴わない部分発作。ジャクソン(Jackson)型発作ともいいます
  • 複雑部分発作…部分発作で始まり、意識障害を起こすもの
  • 二次性全般化発作…部分発作の経過中に全身けいれんを生じるもの

部分発作のあれこれ

  • 小児部分てんかん…小児にみられる部分的なてんかんで、経過は良好です。
  • 側頭葉てんかん(精神運動発作)…においや懐かしい感じを前兆とし、もうろう状態となってじっと見つめます。もぐもぐ口を動かす、衣服をつまむなどの自動症です。30秒から2分で回復します。発作中のことはなにも覚えていません。
  • 前頭葉てんかん…大脳の病気の場所と反対側にある顔面や手足のまひを生じます。ことばが急に出なくなったり、逆に奇声を発したりします。性的な動きをすることもあります。
  • 頭頂葉てんかん…大脳の病気の場所と反対側のからだに異常な感覚を感じます。電気やニュルニュルしたものが伝わる感じというのが典型です。
  • 後頭葉てんかん…キラキラ光るものが見えたり、半分が見えなくなったりします。片頭痛に似た頭痛を覚えることもあります。

治療

神経細胞が過度に興奮することを抑えるために、抗てんかん薬を使います。きちんと毎日服用することで血液中の濃度を一定に保つことが大切です。日常生活では禁酒と12時前に就寝することに気をつけます。

てんかんの発作型によって治療薬がすこしずつ異なります。治療は一種類の薬だけを服用することを原則として、血液中の濃度と脳波を見ながらコントロールしていきます。一種類の薬だけで約80%の患者で発作のコントロールが可能です。複数の薬が必要な例は治療がむずかしいケースが多いのです。

薬物治療と外科的治療の比較

今日では約80%のてんかん患者は薬物治療によって発作のない生活を送ることができています。特に原因のあきらかでない大発作てんかんは薬物治療によく反応します。これに対して、約20%のてんかん患者は薬物治療に十分に反応せず、発作が続きます。この薬物治療に反応しないグループのなかでは、その60~80%は皮質切除の外科治療によって改善します。

薬剤をいつ中止できるか

発作が消失している患者で薬剤を中止した場合、どのくらいの頻度で再発をみるかという研究は多数あります。論文によって異なりますが、おおむね再発率は3分の1前後です。そのうちでも小児では再発率が12~36.3%と、比較的低く、いっぽうで成人では26~63%と高い値が報告されています。

再発はその多くが中止後1年以内に起こります。実際に、そのうちの50~80%は減量中に生じます。このことは逆に、抗てんかん薬の減量によって発作が誘発された可能性を示してもいます。したがって、薬の減量はなるべくゆっくりとおこないます。

また、約3分の1ないし半数に発作が再発することは、それだけのリスクを覚悟して減量する意味があるのかどうかを考えさせます。つまり、職業によっては発作が数年なくても、保険をかけるような意味で服用を続けるほうが安全です。

なお、アルコールの飲用、過労、睡眠不足などを契機に大発作を誘発することも多いので、薬物中止後も定期的に専門医とコンタクトをもちましょう。

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