筋萎縮性側索硬化症(ALS)、運動ニューロン疾患(MND)とは?

筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、最近では「運動ニューロン疾患(MND)」と呼ばれることも多くなりました。中年以降に発症し、2~3年の経過で筋萎縮、筋力低下が急速に進行し、呼吸まひで死亡します。ふつうは遺伝性はありません。

病気の起こる場所は大脳皮質から脳幹や脊髄への運動神経路、脳幹の顔面神経核、舌下神経核、脊髄の前角細胞、前根、運動神経です。一方、感覚を伝える組織はまったく正常のままです。

症状

症状は顔面筋、舌筋、四肢の筋肉に筋力低下、筋萎縮が始まり、徐々に進行していきます。このとき筋線維束攣縮(きんせんいそくれんしゅく)といって、筋肉の細かな痙攣(けいれん)をみます。すべての運動機能が障害されていきますが、眼球運動、感覚、排尿排便は正常のままです。

診断

診断は症状と、筋電図で広汎に神経原性変化をみることで容易におこなわれます。治療は興奮性アミノ酸を抑えるリルゾールが有効です。ただし、治療にもかかわらず数年のうちに呼吸筋がまひします。

治療について

疾患について告知をするかどうか、人工呼吸器をつけるかどうかが問題となります。告知を希望する患者には時間をかけて説明をし、正しい病名を告知します。

担当医としては筋力低下がいかなる努力にもかかわらず進行し、やがて呼吸筋まひ、炭酸ガス貯留による脳症を生じてくることを説明します。看護師にも予想される経過を説明し、ソーシャルワーカーに生活支援の助言を依頼します。保健所の訪問看護、地域医師会の神経難病往診など、行政との二人三脚で患者をケアしていきます。

人工呼吸器を装着する場合には、数年のうちに四肢の運動はまったく不可能になること、感覚はそれにもかかわらず正常なので、からだの痛みが常に起こること、毎日何回かチューブをはずして喀たん(かくたん)の吸引をすること、結局は数年ないし十数年のうちに機械の故障やチューブのはずれなどの事故によって死亡することが避けられないことを患者、家族とよく話し合い、納得したうえで装着をします。いったん装着したらはずすことは不可能です。

この疾患は国の特定疾患治療研究事業対象疾患(難病)に指定されており、医療費の公費負担対象になっています。

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