単神経炎の種類とそれぞれの特徴

単神経炎には動眼神経まひ、顔面神経まひ(ベルまひ)、手根管症候群[しゅこんかんしょうこうぐん]などがあります。

動眼神経まひ

動眼神経まひは糖尿病、動脈硬化症などを有する症例に起こります。2~3日の経過で眼瞼下垂(まぶたが垂れ下がる)、瞳孔が開き、物が二重に見える症状が起こります。これは動眼神経に起こる一種の脳梗塞と考えられています。

症状は重篤にみえますが、たいていの場合、完全に回復します。治療はプロスタグランジンの点滴が有効です。

顔面神経まひ(ベルまひ)

顔面神経まひは、あきらかな原因なしに起こるベルまひ(イギリスのチャールス・ベルが報告したことによる)と、糖尿病や動脈硬化症に伴うものがあります。数日の経過で一側の顔面筋が完全にまひをします。額にしわが寄らなくなり、眼を閉じられなくなり、口のはしから水がこぼれます。まひの側の舌で味覚が低下します。

音が大きく聞こえたり、涙が出なくなる、あるいは出すぎることもあります。治療は副腎皮質ホルモン内服、プロスタグランジン製剤の点滴、角膜の保護、星状神経節ブロックなどが有効です。

早期からリハビリをおこないます。両手で顔面の下から上へもみ上げるようにしていきます。通常は1カ月で治癒します。

手根管症候群

手根管症候群は、産後の女性や中年の女性に多発する疾患です。症状は夜間人差し指、中指、薬指の3本の手のひら側にジンジンするしびれで始まります。進行すると日中にもしびれを感じるようになり、やがて母指球(親指の根もとで筋肉がふくらんでいるところ)が萎縮してきます。

さらに進行すると、手のひらの筋肉がなくなり、猿手といって、物をつかむことができなくなります。

診断は手のひら側の腕関節でここを通る正中神経をたたくと、指先にビリッとしびれが走ることでわかります。筋電図で伝導速度をはかり、確定診断をします。

手根管症候群のかげに隠れた病気があることもあります。たとえば、糖尿病、甲状腺機能低下症、慢性関節リウマチ、末端肥大症(脳下垂体腫瘍)などが知られています。

治療は手を使わないようにすることで、軽いうちは入浴時に手くびをマッサージします。かばんは肩にかけたり、ひじで持ったりするようにこころがけます。進行した場合は手術で手根管を開くことで完治します。

橈骨(とうこつ)神経まひ

橈骨神経まひでは手くびを伸ばすことができず、まるで幽霊のように手が下がってしまいます。深酒をしたり、疲れて寝入り、二の腕を圧迫してここを走る橈骨神経がまひするのが原因です。

「ハネムーンまひ」とか「土曜の夜のまひ」という別名もあります。いずれも腕枕が原因となります。治療は通電療法などのマッサージ、リハビリが主体です。

尺骨神経まひ

尺骨神経まひはひじの部位で尺骨神経が圧迫されて起こります。このまひを生じると、小指の根もとにある筋肉のふくらみ(小指球)が萎縮し、指を伸ばしたり、外に開くことができなくなります。その結果、鷲手といって、あたかもビールジョッキを持っているような手の形になります。

治療は外科的に尺骨神経の圧迫を取り除く必要があります。

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