痴呆は、一度成長して十分な知能を完成したあとに、脳の障害によって日常生活に支障をきたすようになった状態をいいます。わが国では65歳以上の高齢者の7%に痴呆があります。脳の障害を具体的に分析すると、記憶障害と認知の障害になります。
様々な病気で痴呆が起こりますが、そのうちもっとも多いものが「アルツハイマー病」で、次に多いのが「多発性脳梗塞」による痴呆です。そのほかにも、以下のような病気で痴呆になることがあります。
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また、うつ病によって仮性痴呆を起こすことがあります。これは一見して痴呆状態なのですが、うつ病の治療によって治ります。
アルツハイマー病(アルツハイマー型認知症)
認知機能低下、人格の変化を主な症状とする認知症の一種で、日本では、認知症のうちでも脳血管性認知症、レビー小体病と並んで最も多いタイプです。
多発梗塞性認知症
糖尿病、高血圧症、たばこ、高脂血症などの動脈硬化症の危険因子があり、脳梗塞をくり返すことによって痴呆があらわれ、進んでいきます。
アルツハイマー病との鑑別診断が重要になりますが、多発梗塞性痴呆ではCTやMRIで脳梗塞が多発していること、病気の進行はゆっくりで、階段状に一歩一歩わるくなっていきます。CTでみて脳の100g以上に梗塞が起こると、痴呆が始まると考えられています。
初期から人格の障害があらわれます。感情失禁が目立つことも特徴で、ちょっとしたささいな出来事で泣き出したり、笑い出したりします。「まだら痴呆」といって、時にはびっくりするくらいまともな応対をすることもあります。治療は脳梗塞に準じます。
正常圧水頭症
いつとはなしに痴呆が始まって、ゆっくりと進む病気で、治療が可能なものとして注目されています。主要な症状は以下の3点です。
- 痴呆
- 歩行障害
- 尿失禁
特に歩行は足を上げず、左右にフラフラと歩くのが特徴です。タクシーの中や会議中など、不適当な場所で尿失禁を生じるようになります。
検査では頭部CTで側脳室が拡大し、脳槽シンチグラムでは2~3時間で脊髄腔から脳室内への逆流をみとめます。さらに、髄液を30~50cc取ることで痴呆や歩行障害などの症状が一時的に改善する特徴があります。
原因としては過去に頭部外傷や、くも膜下出血を起こしたもの、まったく原因が不明のものなどさまざまです。
治療は脳室から腹腔内へのシャント(バイパス)を置きます。30~40%の症例で、症状が軽快したと報告されています。手術の合併症も約30%の症例で起きています。