重症筋無力症の症状と治療方法について

症状

最初の症状は、夕方になるとからだが重くなって疲れやすい、ものが二重に見える、まぶたが下がるです。もっとも特徴的なことは、運動をくり返すとどんどん力が弱くなり、しばらく休むと、またもとに戻ることです。

20~30代の女性に多く発病しますが、40代以降の男性にもみられます。

病気が進むと、目の症状のほかに、ものを飲み込みにくい、鼻声になる、さらに手足の筋肉の脱力も進行し、舌などの筋肉もおとろえていきます。やがては呼吸が困難になり、ものを飲み込むこともできなくなります。

診断

診断には血液検査、筋電図と縦隔の画像検査が大切です。

血液検査では、筋肉の病気の多くで上昇するクレアチンキナーゼは正常です。いっぽうで、抗アセチルコリンリセプター抗体という特殊な抗体があらわれます。筋電図検査では神経を刺激して筋肉の収縮を観察します。1回だけ刺激すると正常の形ですが、くり返し刺激していくとどんどん小さくなっていきます。

重症筋無力症では、胸中央の胸骨のすぐ下にある胸腺に腫瘍や肥大がみられます。ここで神経筋接合部を攻撃する抗体がつくられるのです。

神経が末端までくると、神経線維はやや大きく広がり、筋肉との間にわずかの空間をはさんで向かいあいます。ここが神経筋接合部です。インパルスが神経の末端まで到着すると、神経末端にたくわえられていたアセチルコリンがこの空間へ分泌されます。このアセチルコリンは筋肉側の膜に到着し、筋肉が収縮します。この膜にはアセチルコリンを受け取るアセチルコリンリセプターという受容器があるからです。重症筋無力症では胸腺の免疫異常から、このリセプターに対する抗体ができ、筋肉側の膜の感受性がにぶくなります。

神経のインパルスが1回だけなら、なんとか筋肉を刺激できますが、何度もインパルスがくると、筋肉側の膜の感受性がにぶいために、筋肉に刺激が伝わらなくなります。こうして筋肉の脱力が起こるのです。

治療

治療はポイントが3つあります。

  • 胸腺を外科的に取り除くこと
  • アセチルコリンを長持ちさせる薬をのむこと
  • 免疫異常の治療のため副腎皮質ホルモンを長期にわたって服用すること

胸腺の手術は、以前は胸を広く切り開かねばならなかったのですが、最近では内視鏡を使って、ほとんど傷も残らないようになりました。ただし、胸腺の腫瘍が悪性の場合には、周囲に腫瘍細胞が浸潤しているので、取り残さないために広く切開が必要になり、また術後に放射線療法をおこなうこともあります。

アセチルコリンは分泌されたあと、アセチルコリンエステラーゼという酵素で洗い流されます。そこで、この酵素のはたらきを抑える抗コリンエステラーゼ薬を服用します。カリウム剤を併用すると効果的です。副腎皮質ホルモンの服用方法も10年前とはすっかり変わり、工夫がこらされています。

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