パーキンソン病と関連疾患について

頭部関連

パーキンソン病は、イギリスの医師ジェームス・パーキンソンの名前からつけられたものです。大脳と脊髄をつなぐ中脳には左右に2つ、肉眼で黒く見える部分があります。これが黒質です。

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黒質ではドパミンという物質がつくられ、大脳の線条体に運ばれます。線条体はドパミンによって刺激され、からだの運動を円滑におこなうことができるようになります。この黒質のはたらきがなんらかの原因でわるくなるとドパミンが足りなくなり、線条体がうまくはたらかなくなります。すると手足がふるえ、からだの動きがにぶく、ぎこちないものとなります。これがパーキンソン病です。

黒質のはたらきをわるくする物質がいろいろと知られています。たとえば、一酸化炭素、エコノモ脳炎ウイルス、MPTPなどです。一酸化炭素中毒から回復したあとに、手足のふるえやぎこちなさなどのパーキンソン症状が始まることは珍しくありません。

エコノモ脳炎は1910年前後に世界的に流行した脳炎です。この病気にかかるとあたかもこんこんと寝たようになるので、嗜眠性脳炎とも呼ばれました。脳炎から回復し、意識が戻ってホッとしたのもつかの間、手足のふるえ、こわばり、歩行障害などがあらわれます。

MPTPが見つかったのはほんの偶然からでした。突然からだがこわばり、まったく動けなくなった若い男性が入院してきたのがきっかけです。よく調べると、彼は麻薬中毒患者で、合成された麻薬を使ったとたんにパーキンソン病の症状があらわれたのです。同じような患者が次々に運びこまれ、その結果、麻薬の不純物として混入していたMPTPという物質が犯人とわかりました。

解剖すると、黒質に強い障害が見つかりました。驚くべきことに、MPTPでパーキンソン症状を発病すると、薬をやめてももはやもとに戻らないことです。 これらは原因がわかっており、それによってパーキンソン病の症状が起きるので、本当のパーキンソン病とは区別をして、パーキンソニズムと呼ばれます。

本来のパーキンソン病ではなにが原因となっているのかは実はまだわかっていません。少数は遺伝的に発病します。しかしながら大多数の患者は遺伝とは関係なく、なんらかの原因で黒質の神経細胞が攻撃を受けるためだろうと考えられています。

パーキンソン病と関連疾患(進行性核上性まひ、大脳皮質基底核変性症)は国の特定疾患治療研究事業対象疾患(難病)に指定されており、医療費の公費負担対象となっています。

症状

パーキンソン病の症状はいろいろありますが、そのうちで特に振戦、固縮、無動を三大兆候と呼びます。さらに姿勢反射障害などもあります。

振戦

パーキンソン病で見られるふるえは、安静にしていてもふるえが続く特徴があります。ふるえは、最初は右手あるいは左手に始まることが多く、右足や左足のこともあります。このように左右差のある点が特徴です。

ふるえは、はじめのうちはときどき出没するだけですが、病気の進行に伴って持続的になり、反対側の手あるいは足にもふるえが出るようになります。

また、手は烏口のような形(人差し指から小指の関節がまっすぐに伸び、親指と向き合う)になるので、ふるえはまるで指で丸薬を丸めているように見えます。ふるえのスピードはおよそ毎秒5回です。

固縮

この症状は本人が自覚することのない症状です。手や足の力を抜き、医師が関節を曲げ伸ばしします。ふつうならなんの抵抗もなく、固縮があると強い抵抗を感じます。

無動

パーキンソン病の患者がいすに座っているのを見ると、何分、何十分たっても、じっと同じ姿勢をとり続けています。ふつうならからだがつらいのでいろいろと姿勢をくずしたり、足を組んだり、座り直したりしますが、それがありません。これを無動と呼びます。まばたきの回数も減り、歩行でも手をふらなくなります。

動作をすると、とてもおそく見えます。いすからさっと立ち上がることができず、徐々にテーブルに手をつき、ゆっくりと立ち上がります。このように動作がおそいことを動作緩慢といいます。患者は一見して力が弱いようにみえますが、握力計で調べると、正常であることがわかります。

パーキンソン病では、床ずれをつくりやすくなります。寝たきりの患者では、油断をしていると一晩で床ずれができてしまうことがあるほどです。そのひとつの原因は、寝ているときでもほとんどからだが動かず、同じ場所が圧迫されるためです。こういう場合は3時間おきに体位を変えたり、エアマットレスを使う必要があります。

姿勢反射障害

私たちは転びそうになると、手を大きく動かし、からだのバランスをとって立ち直ろうとします。パーキンソン病の患者では、まっすぐに立っているときに、肩を押したり引いたりしてバランスをくずすと、手を動かさず棒のように倒れてしまいます。

歩行時には手を足と反対に交互に動かし、バランスをとりますが、患者は手をほとんど動かさず、トボトボと歩くように見えます。これが姿勢反射障害です。姿勢反射障害はただちに歩行障害につながり、進行すると立つだけでも手をひいてもらうなど、他人の介助を必要とするようになります。

自律神経障害

パーキンソン病が便秘の症状から始まることは珍しくありません。便秘はパーキンソン病でもっとも多い症状の1つで、通常の抗パーキンソン薬は無効です。そのため、どうしても便秘薬が必要になります。腸管を動かす自律神経細胞は腸管の筋肉層にありますが、顕微鏡では、黒質と同じように変性していることがわかります。

汗も出にくくなります。特に足からだんだんと汗をかかない部分が広がり、大腿、腹部へ上がっていきます。足に汗をかかないぶん、顔にひどく汗をかくようになります。このため、脂ぎった顔になります。

立ちくらみもみられます。正常では立ち上がると、足の血管が自動的に収縮し、反射的に血圧が保たれます。パーキンソン病では血圧の自動的なコントロールがうまくいかなくなり、立ち上がると血圧が低下します。これを起立性低血圧といいます。もともと高血圧であった人も、パーキンソン病が発病すると、自然に血圧が低下、正常化するのがふつうです。

足がむくみやすくなります。特にじっと座っていると足のむくみがひどくなります。夜間、足を高くして寝ると、朝には自然にむくみがとれています。このむくみは心臓病、腎臓病、あるいは血清のたんぱく低下などとは関係なく、心配はいりません。

有痛性ジストニアが起きることがあります。これは歩いたり、横になると、親指がギュウッと反り返り、痛むものです。時には他の部分に起こることもありますが、たいへん不快な症状です。ある種の抗パーキンソン薬が有効です。

人の顔が見えるなどの幻視も多いものです。ただ、人の声が聞こえるなどの幻聴はまず起こりません。記銘力の低下など痴呆症状が伴うこともあり、ある種の抗パーキンソン薬が原因になることもあるので、注意が必要です。

パーキンソン病は決まったパターンで進行します。この重症度をあらわすのにはホーン・ヤールの重症度分類、通称ヤールの重症度分類が使いやすく便利です。また、厚生省(現厚生労働省)の異常運動疾患調査研究班がまとめた生活機能障害度分類があり、両者はほぼ対応しています。

突進現象というのは歩いているうちにだんだん早足となり、トットットと小走りになる現象です。歩行がかなり危なくなります。

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治療

パーキンソン病の治療の原則は、必要な薬をきちんと服用することと運動です。パーキンソン病の治療薬を抗パーキンソン薬と呼びます。これには多数あるだけではなく、すこしずつ効果や副作用、注意点も異なります。
まず、抗パーキンソン薬は大きく4種類に分けることができます。

L‐ドーパ

パーキンソン病では黒質でつくられるドパミンが不足します。そこで、ドパミンの原材料となるL‐ドーパがもっとも大切です。L‐ドーパによってパーキンソン病の症状は便秘を除き、ほとんどすべてが改善します。

ただし、L‐ドーパ単独で服用すると、脳に入るまでに9割ほどが血液中の酵素反応で無効な物質となってしまいます。そこで、ドーパ脱炭酸酵素阻害薬と合剤になっています。

ドパミンアゴニスト

大脳の線条体にはドパミンに反応する受容体(ドパミン受容体)があり、ここが刺激を受けるとからだが円滑に動けるようになります。L‐ドーパはドパミンをふやして症状を改善するものですが、L‐ドーパ以外のものでこの受容体を刺激できます。

これをドパミンアゴニストといい、ブロモクリプチン、ペルゴリド、タリペキソール、ロピニロール、カベルゴリンがあります。

これらは、いわばL‐ドーパの助っ人のようなはたらきをするもので、通常はL‐ドーパと組み合わせて使われます。

特にペルゴリドやロピニロール、カベルゴリンは半減期が長いので、薬の効果を長く保つことができます。いっぽうで胃腸に対する副作用が多く、少量からすこしずつふやしていきます。

ドプスなど

ドプスはドパミンに対して直接影響を与えるものではありませんが、別のルートからパーキンソン症状を改善するもので、特にすくみ足に効果があります。そのほか、デプレニル、ラザベマイド、トルカポンなどはドパミンがこわされないようにして持続時間を長くする薬です。

抗アセチルコリン薬、アマンタジン

古くから使われている薬で、特に無動や振戦に有効ですが、高齢者では精神症状や痴呆、便秘の副作用が多く、最近はあまり使われなくなっています。アマンタジンはドパミンを放出させる薬ですが、効果はあまり強くありません。

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