プリオン病(クロイツフェルト・ヤコブ病)の症状と診断方法について

クロイツフェルト・ヤコブ病はウイルスよりも小さい、プリオンという病原性たんぱくの感染によって起こる病気です。これを一括してプリオン病とも呼びます。

プリオン病はもともと羊に脳障害を起こすスクレイピーとして見つかりました。死んだ羊を解剖すると、まるでスポンジのように脳に孔があいていました。そこからスポンジ型脳症という名前も生まれたほどです。この死んだ羊を材料にして餌をつくり、牛に与えたことからBSE(Bovine Spongiform Encephalopathy)=牛海綿状脳症(狂牛病)が始まりました。

一方、ニューギニアには「クル」という風土病が知られていました。クルは精神症状や全身けいれんが起こって死ぬ病気です。

クロイツフェルト・ヤコブ病はドイツのクロイツフェルトとヤコブがはじめて報告しましたが、スクレイピーとクルがよく似ていることと、脳にいずれもスポンジのように孔があいている共通点から、同じ病気と考えられるようになりました。

その病原体としてプリオンが発見されたのです。

プリオンはウイルスよりもずっと小さなたんぱくです。そして、プリオンを含む脳、脊髄、神経を食べたり、角膜を移植したり、プリオンを含む脳の硬膜を手術で使うと2~4年で発病します。

体外のプリオンから感染する場合のほかに、異常なプリオンをつくる遺伝子を遺伝しても発病します。

遺伝性のプリオン病にはたとえばゲルストマン・シュトロイスラー・シャインカー病などが知られていますが、プリオンは100度の熱湯で数時間消毒しても死なないため、BSEにかかった牛のテールスープ(脊髄や神経が含まれる)は危険です。

主な症状

クロイツフェルト・ヤコブ病は50~70歳に発病することが多く、発病するとまず記憶力の障害があらわれます。徐々にろれつが回らなくなり、歩行もふらつくようになり、やがて歩行できなくなります。

また、後頭葉の異常から、物がおかしい形に見え、手足に異常な不随意運動が始まります。これを「ミオクローヌス」といい、非常にすばやく、不規則な動きです。

診断

脳波の特徴的な波形や遺伝子解析から診断されます。発症して数カ月のうちに寝たきりとなります。やがて言葉も発しなくなり、植物状態となり、さらに1~2年で肺炎などから死亡します。残念ながら、現在では治療法は確立されていません。

BSEで発病したプリオン病は、通常のクロイツフェルト・ヤコブ病よりも年が若く、20代のことが多いのが特徴です。亡くなった患者の脳下垂体から抽出した成長ホルモンを、小児期に注射されて感染したクロイツフェルト・ヤコブ病の例にも20代のケースがあります。

このため生前痴呆のあった患者から臓器移植をおこなうことはできません。ただし、尿、便などから感染することはありません。

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