緊張型頭痛の原因と症状・治療方法について

緊張型頭痛は、1988年の国際頭痛学会の分類によると、圧迫されるような痛みであること、軽度ないし中等度の痛みであること、両側に生じること、階段歩行などの日常動作によっては増悪しないこと、悪心や嘔吐は伴わないこと、光や音の過敏症はないことを重要な特徴として挙げています。

このように、緊張型頭痛の臨床像は特徴的で、一疾患単位として認められています。

緊張型頭痛の原因

十分に血液が供給されない状態で、筋肉が長時間収縮を続けると(阻血性筋収縮)、乳酸、ピルビン酸などの疼痛物質が遊離されます。これが神経を刺激して痛みが生じます。筋付着部や靱帯には末梢神経が密に分布しているので痛みとして感じます。

この痛みの特徴は重くにぶい痛みで、緊張型頭痛では後頸筋の付着部の後頭下に生じます。同時に側頭部や眼窩後部に放散してそこにも痛みを覚えます。これが緊張型頭痛のメカニズムです。

同時に神経の少ない筋腹には痛みというよりも、よりにぶく局在性のはっきりしない、いわゆる「こり」を感じます。

二の腕を血圧計のマンシェットで阻血し、手を1~2分開閉すると、痛みが骨格筋の付着部(ひじと手くび)から始まり、時間とともに痛みが増します。いっぽうで前腕の筋腹には重くだるい感じが生じ、時には翌日まで持続します。

緊張型頭痛の患者をよく観察すると、頭痛が発生するときには、ほとんどの場合、頭部を屈曲した、いわゆるうつむき姿勢をとっていることがわかります。うつむきのために後頸筋は強い筋緊張状態にあり、触れると実際に筋腹がかたくなっています。また、つねに左側に頭痛を生じる例では、無意識に頭を右に傾け、結果的に左側の筋の緊張が強まっています。早朝に頭痛を生じて目を覚ますのは、高い枕、あるいはかたい枕を使用して、結果的に後頸筋の緊張を高めるケースです。

患者はまず後頸部の「はり」や「こり」を覚えます。「はり」は筋が緊張している感じを指し、「こり」はその結果としてにぶい痛みが始まったものです。ついで、後頭部から鈍痛が始まり、側頭部、さらに眼窩後部へと放散していきます。時には最初から側頭部や眼窩後部に痛みを覚えることもあります。

このようなケースでも、詳細に調べると、後頭下部に圧痛があり、くびのはりやこりから始まっていることがわかります。ちょうど心筋梗塞の際に上腕に痛みを覚えたり、虫垂炎の際に上腹部に疼痛が始まることがあるのと同様で、このような痛みを放散痛といいます。

後頭下にある圧痛点(押して痛く感じるポイント)をキシロカインなどで浸潤麻酔すれば、ただちに全体に広がった頭痛は消失し、すなわち頭痛はこの圧痛点からの放散痛であったことがわかります。また、圧痛点に食塩水などを注入して刺激をすると、頭痛が強まります。

同じようにうつむいた姿勢を続けていても、頭痛を起こしやすい人と起こしにくい人がいます。それはなぜでしょうか。

椅子に座った状態で後頸筋の筋電図を記録しながら頭痛患者におへそを見るようにうつむかせると、まず後頸部の張った感じをうったえます。そのまま続けると、2分ほどで後頭部から鈍痛が始まり、やがて前方へ広がり、さらに拍動性の頭痛も生じてきます。このときの筋電図記録を見ると、頭痛を生じない対照例に比べて、筋電図の変化が大きいことがわかります。すなわち、頭痛患者では、頭痛のない対照例に比べて、同じうつむき姿勢をとっても有意に強い筋収縮が起こるのです。

また頭痛が誘発された状態でも、顔を上げて上を向かせるだけで、後頸筋の収縮は消失します。したがって、この強い筋収縮は痛みから起こっているのではありません。そして、頭痛を起こしやすい患者は、頭痛を経験しない人に比べて後頸筋の収縮が強く起こりやすいことがあきらかにされています。その要因として、体型、頸椎の問題、血圧、貧血、ストレスなどがあります。

頭痛患者の体型

頭の重さは数キログラムもあります。液体の入ったワインのボトル2~3本が、おおよそ頭の重さに相当します。これを手で持ってみましょう。腕を伸ばしていると、たちまちのうちに腕が痛くなってきます。私たちは、ほとんど頭の重さを意識することはありませんが、これだけの重いものを、常にくびの上にのせているのです。

頭痛患者の体型を調べると、頭の重さに比してくびが細長いことがわかります。この体型をあらわすものに頭重負荷指数(頭痛指数)があります。くびの単位面積あたりにかかる頭重のモーメントをあらわしたものです。患者の数値は、ふつうの人よりもはっきりと大きく、女性は男性よりも大きい結果が出ています。

これは、頭重が後頸筋に強い負荷となっていることをあらわすとともに、女性に緊張型頭痛が頻発する原因の1つと考えられています。

頸椎の問題

頸椎がしっかりと頭を支えていることを頸椎の支持性といいます。頸椎の椎体は通常なめらかなカーブを描いて、物理的にがっしりと頭を支えています。もし頸椎がなければ頭を筋肉だけで支えることになり、ほとんど不可能でしょう。

ところが、頭痛患者ではこの頸椎の支持性に問題があることがあきらかにされています。

頸椎が前屈時に折れ曲がってしまうことをアンギュレーションと呼びます。ちょうどZ型ライトの頭が重すぎて、途中で折れ曲がってしまうようなものです。これでは頭の重さを支えることはできません。

また、前屈時に1つ1つの頸椎が前のほうにずれてしまう状態を不安定性(インスタビリティ)と呼びます。これも頸椎が頭重を支える能力をいちじるしく障害することになります。

X線による検査では、頭痛患者の約50%でアンギュレーションあるいはインスタビリティが見いだされています。

低血圧や貧血

後頸筋が収縮する際に、筋肉が過度に収縮する場合(体型や頸椎の問題)と、筋肉に十分な酸素が供給されない場合が問題になることがわかっています。では、どのようなときに酸素の供給が十分ではなくなるのでしょうか。

まず、低血圧が挙げられます。臨床的にも低血圧の人は緊張型頭痛を起こしやすいことが知られています。低血圧の人がうつむき姿勢をとると、筋がかたく収縮するので、血液の流れがとどこおることになります。

貧血では、もともと血液が酸素を供給する能力に問題があるので、血流が保たれていても、酸素不足におちいり、頭痛を起こしやすいのです。

ストレスと頭痛の関係

ストレスやうつ病がただちに頭痛を誘発するわけではありません。たしかに慢性頭痛患者はうつ的な気分をもつことが多くあります。しかし、毎日頭痛を覚えながら、躁的な気分になる人がいるでしょうか?

筋電図や血流を測定しながら暗算負荷などのストレスをかけると、筋収縮にはまったく変化がみられませんが、筋血流量は時として50%も低下します。

したがって、なんらかの原因で頭蓋筋が持続的に収縮しているときに強いストレスがかかると、たちまち酸素不足状態の筋収縮が起こり、痛みの物質が出てくるのです。

枕の問題

枕は高ければ高いほど、後頸筋の緊張が強くなります。できれば、バスタオルを2~3回折ったもの、あるいは低く大きな羽根枕を使用するとよいでしょう。

治療と予防

以上で述べてきたことから、頭痛の予防法は以下の通りとなります。

  1. うつむき姿勢は避け、頭の上に文庫本をのせた姿勢をとります。
  2. 痛みをがまんしていると痛みの物質がどんどんふえます。すこし頭が重くなったら、黄色信号と考え、姿勢を正して5分間休憩します。
  3. 貧血や低血圧があれば、治療します。
  4. ストレスを克服します。むずかしいときは精神安定薬を一時使用します。
  5. 頸筋を鍛えます。壁押し体操から始め、腕立て伏せ、腹筋、背筋体操を続けます。
  6. 枕を低く、やわらかいものにします。
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