その他の脳血管障害について

慢性硬膜下血腫

高齢者に多い疾患です。頭をかもい(鴨居:和室の襖や障子などの建具を立て込むために引き戸状開口部の上枠として取り付けられる横木)にぶつけるなど軽微な頭部外傷の2~3週間後から徐々に物忘れ、軽い片まひの症状で始まり、やがて意識障害が進行していきます。外傷は軽いことが多く、患者自身が覚えていないこともあります。

高齢者に多いので、急にぼけが始まったとして放置されることもあります。治療をしなければ硬膜下の血腫が徐々に進行し、頭痛、意識障害、片まひからさらに脳ヘルニアを生じて呼吸まひに至ることもあります。

診断と治療

診断はX線CTによって容易に下すことができます。

脳の膜には脳の表面にある軟膜、くも膜、硬膜があり、さらに頭蓋骨になります。硬膜下血腫は、くも膜と硬膜の間に出血するものをいいます。急性硬膜下血腫は強い頭部外傷ののちに起こるもので、多くは脳の損傷を伴います。これに比して慢性硬膜下血腫は軽微な外傷で硬膜下の細い静脈が破れ、徐々に出血が広がります。

治療は脳外科的に開頭(バーホールといって、小さい孔をあけるだけですむ)し、脳と硬膜の間にたまっている血腫を除去します。手術は脳を傷つけることはなく、意識障害や片まひも術後急速によくなります。

動脈瘤

原因

脳の動脈は太い内頸動脈と脳底動脈が頭蓋内に入って動脈の輪(発見者の名を取ってウィリス輪という)をつくります。

さらにここから前大脳動脈、中大脳動脈、後大脳動脈が分岐していきます。これらの太い動脈の分岐部に動脈のこぶ(動脈瘤)ができ、これが血圧上昇などで破れたものがくも膜下出血です。

動脈瘤のある場所は脳底部で脳の外にあるため、出血は脳の外のくも膜下腔に広がります。

50歳以下のくも膜下出血は先天性の動脈瘤によることが多く、60歳以上の場合は動脈硬化から動脈瘤が生じたものであることが多いのです。

症状

くも膜下出血の特徴は頭痛です。突然、いままでに経験したことのないような強い頭痛が始まります。これは頭全体を締め付けるような頭痛で、いったん始まると朝も晩も、入浴しても睡眠など休憩を十分にとっても同じように続きます。

多くの場合はただちに意識障害が進行し、1時間以内に呼吸が停止することもあります。くびはカチカチにかたくなり、眼底をのぞくと網膜の前に出血が見えます。

診断

CTでは正常の場合、脳の周囲と骨の間は髄液のため黒く見えます。くも膜下出血ではここに出血があり、白く見えます。髄液検査をすると、髄液は血性に見えます。

動脈瘤を脳血管造影で診断する方法と、3次元CTやMRアンギオなどで画像検査する方法があります。

治療

診断がつきしだい、手術になります。手術方法としては開頭して動脈瘤を直接観察し、クリップでこぶの根本を挟む方法と、脳血管造影の方法でワイヤーを動脈瘤まで進め、コイルを動脈瘤内に入れてふさいでしまう方法とがあり、いずれも一長一短があります。

予後

軽いくも膜下出血の場合は特に後遺症を残さずに完治します。動脈瘤から脳内に血液が噴出すると、脳出血と同じようなまひを生じます。また、出血した動脈がけいれんを起こして血管が細くなり、血液が通らなくなると脳梗塞を生じます。

破裂した動脈瘤を手術せずに放置しておくと、1カ月後の死亡率は50%に達します。ただ、脳ドックで見つかった動脈瘤が1年間に破裂する確率は1.5~2%とされています。したがって、年齢によっては手術による後遺症を考え、手術を見あわせることもあります。

脳動静脈奇形(のうどうじょうみゃくきけい)

動脈の末端は毛細血管を経て静脈につながるのがふつうですが、直接動脈と静脈がつながったり(吻合:ふんごう)、小さいかたまりをつくったりしている場合があります。

先天的に存在する場合を脳動静脈奇形といいますが、頭部外傷で動脈壁の障害が起こった場合にも、後天的な動静脈吻合ができる場合もあります。

脳動静脈奇形も脳動脈瘤と同様に破裂することがあります。その場合は、くも膜下出血の状態となります。また破裂しない場合でも、しばしばてんかん発作で発病することがあります。

長期の経過中には、結局くも膜下出血とてんかん発作の両者が出現してくるようになります。

出血の場合、脳動脈瘤と異なり、20歳以前に多く、また死亡率は、初発時も再発時も10%ぐらいでほぼ同様です。手術も動脈瘤ほど簡単ではありません。

したがって手術適応も、病状や病変とのかね合いで慎重に決定されなければなりません。

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