肝硬変の症状と食事療法

肝硬変の食事療法では、「代償期」であるか「非代償期」であるかによって栄養管理に違いがあります。そして、合併症を伴っているかどうかによっても摂取する食事内容が異なってきます。

しかし、肝硬変において食事療法の基本となるのは、「適正なエネルギー量で栄養バランスのとれた食事」であり、この基本をベースとして病態に応じて食事制限を行なう項目を守るように心掛けることが重要です。

合併症を発症した「非代償期」の肝硬変では、病態に応じてしっかりとした食事療法が必要となり、定期的な病院での診断を受け、医師の指導のもと、実施することが大切です。

肝硬変の食事療法 代償期・非代償期での違い

肝硬変は初期の頃では全く自覚症状が感じられないことが多く、症状が出ていない場合の肝硬変は「代償期肝硬変」と呼びます。一方、全身倦怠感など何らかの症状が現れだした場合を「非代償期肝硬変」と呼んでいます。

代償期にある肝硬変と、病態が進んだ非代償期の肝硬変では食事療法の内容も異なっており、肝硬変と診断された場合であっても、まずは病態の進行程度を把握する必要があります。

代償期肝硬変の食事療法

代償期の肝硬変の場合は、一般的な普通食でバランスのとれた食事内容を基本にした食事療法となり、特に制限される食品などはありませんが、塩分やカロリーの摂り過ぎには注意が必要です。

代償期肝硬変の食事療法において推奨される代表的な食事内容を以下に紹介します。

  • 朝、昼、夕の3食を規則正しく食べる
  • 適正なエネルギー量を摂取し、糖尿病がある場合にはエネルギーの摂取制限をする
  • 多くの種類の食品をバランスよく摂る
  • ビタミン、ミネラルを多く含んだ野菜類、果物類、海藻類などを積極的に摂取する
  • 食物繊維が多く含まれる食品を意識して摂取する
  • 塩分の多い食べ物は極力控える
  • 食品添加物を多く含む加工食品は極力控える

肝硬変の合併症

非代償期の肝硬変では合併症を発症することが多く、合併症の種類によって食事療法の内容で注意しなければならないポイントも異なってきますので、専門医の指導のもとで適切な食生活を続けることが重要となります。

非代償期肝硬変でみられる代表的な合併症としては、腹水、肝性脳症、食道静脈瘤の3つが挙げられます。

腹水

肝硬変が進行すると、血清タンパクの多くを占めているアルブミンという小さなタンパク質が減少し、血管から水分(血漿成分)が漏れ出しやすくなることから、腹部に水が溜まり「腹水」を発症します。腹水が少量の場合であれば、軽い腹部膨満感を感じる程度ですが、腹水が多くなるにつれて腹部膨満感も強くなり、呼吸困難による苦痛を伴うこともあります。

腹水がみられる肝硬変での食事療法

非代償期の肝硬変で腹水の症状が現れている患者の場合、食事療法において塩分制限が基本的に行われます。また、水分の摂取量も控えるように指導されます。制限される塩分量は腹水の程度に応じて異なり、食事療法のみで改善が見られない場合は、利尿剤の服用が行われます。

肝性脳症

肝性脳症は、肝臓の機能不全に伴う精神神経症状のことで、意識障害や異常行動の他、症状が重くなれば昏睡状態を引き起こす場合もあります。

肝性脳症のハッキリとした原因は解明されていませんが、肝機能が作用しなくなることで、肝臓で解毒されるはずだった「アンモニア」等の有害物質を分解することができなくなり、それが体内に蓄積。やがては神経毒性作用のあるアンモニアが、脳に達することが大きな要因ではないかと考えられています。

肝性脳症を伴った肝硬変での食事療法

肝硬変の合併症で肝性脳症を発症している患者の場合、タンパク質の摂取制限が食事療法の基本となります。また、便秘を予防する為に食物繊維を積極的に摂取するように指導されます。これは、食事療法において欠かせない要素であり、タンパク質を多く摂り過ぎたり、便秘を起こすことで、血液中のアンモニアの量が増加することを予防する為です。

食道静脈瘤

肝硬変が進行すると、腸から肝臓に流れる「門脈」と呼ばれる血管の圧力が高くなり、心臓に戻る血液が他の経路を通りだします。その結果、静脈瘤(コブ状のもの)を形成してしまいます。特に胃や食道の静脈に起こりやすく、自覚症状が少ないという特徴があります。

しかし、食事等で刺激を受けると出血しやすく、万一破裂してしまうと大出血を引き起こしてしまいます。その際、吐血や下血が生じることもあります。

食道静脈瘤を伴った肝硬変での食事療法

肝硬変の合併症として食道静脈瘤が生じている患者の場合、食事療法として注意しなければならないのが、食道の炎症を悪化させるような刺激のある食品(辛いもの)や、熱過ぎる飲み物などです。また、静脈瘤を傷つけるような硬い食べ物や魚の骨といった、鋭角部分のある食材にも要注意です。

また、柔らかい食事をする際でも、しっかりと咀嚼(そしゃく)を行い、よく噛んでから飲み込むように心掛けるようにします。

肝臓癌(肝癌)と肝炎ウイルス

肝臓の病気には肝硬変以外にも、脂肪肝、急性肝炎、慢性肝炎などあり、最も危険な肝臓癌(肝癌)は日本でも増加傾向にあります。この肝臓癌は、癌の種類の中でも肺、胃、大腸に続いて多いという統計が出ています。

肝臓癌には幾つかの種類があるのですが、殆どが肝臓内の細胞から発生する「肝細胞癌」となっており、発症原因としてはB型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスなどの感染によるものが殆どを占めているようです。

C型肝炎ウイルスに関して言えば、日本における肝硬変の原因の6割以上を占めており、B型肝炎ウイルスと合わせると肝硬変の原因のおよそ7割~8割近くを占めているのです。

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