食道がんの初期症状は、「飲食時に食道周辺に痛みが生じる」「熱いものを飲み込んだ際に食道がしみる」といった症状が挙げられますが、早期食道がんの場合、自覚症状を殆ど感じない患者も多く、冒頭で挙げた症状を自覚した段階では、すでにガンが進行している場合があります。
しかし、食道がんの5年生存率は比較的高く、リンパ節転移等を生じていない場合であれば、手術による切除で治療できる可能性も高いとされています。逆に言えば、リンパ節や他の臓器への転移があると、それだけ予後も悪くなるということが言えます。
食道がんの初期症状とその原因
冒頭でも例として挙げましたが、食道がんの初期症状としては以下のものが挙げられます。主に、飲食の際の違和感が主だった初期症状だと言われています。
- 食べたり飲んだりする時に、胸の奥でチクチクする
- 熱いものを飲み込んだ時に、食道周辺でしみる感じがする
- その他、飲食の際の食道や胸付近の違和感
ただし、こういった初期症状がまったく無いという人も多く、国立がんセンターの情報によれば、人間ドックで内視鏡検査などを多なった際に発見される患者が2割程度も居るとのことです。
食道がんになる原因
大きな危険因子として考えられている原因として、「喫煙習慣」と「アルコールの過剰摂取」が大きいと考えられており、両方とも行なっている人であれば、食道がんの発症頻度が高まる傾向にあるようです。
また、これらの習慣が無い人でも、「熱いものや辛いものを好んで食べる人」も食道がんとなる可能性を高めている可能性があります。お酒の場所が好きな方であれば、「お酒のつまみ」として「辛いもの、塩分の多いもの」はつきものですし、お酒の場では喫煙を行なう人も多いでしょうから、外食や宴会の場所に関わる機会が多いという方は、特に注意が必要でしょう。
ちなみに、食道がんは女性よりも男性のほうが圧倒的に多く、年齢層では60歳~70歳に多く発病するとされています。
食道がんの生存率(5年生存率)
以下で紹介している表は、日本食道疾患研究会による全国平均データ(1988年~1997年)ですが、食道がんの5年生存率は、その他のガンの生存率と同様に、ガンの進行具合や各医療機関の治療成績によって異なってきます。なので、これらのデータはあくまで参考として捉えておいてください。
病期 | 5年生存率 |
---|---|
1期 | 64.5% |
2A期 | 51.5% |
2B期 | 34.0% |
3期 | 19.8% |
4A期 | 13.7% |
※日本食道疾患研究会(現在は日本食道学会)による全国平均データから引用
以下の表は、がん専門の国公立病院など30施設が加盟する全がん協が公表している、1997年~2000年における初回入院治療症例の5年相対生存率です。食道がんの生存率に関してのもう一つのデータとして、こちらも引用して掲載しておきます。
病期 | 5年相対生存率 |
---|---|
1期 | 78.1% |
2期 | 43.2% |
3期 | 24.5% |
4期 | 7.9% |
※全国がん(成人病)センター協議会の公表データから引用
リンパ節転移のない粘膜下層までのガン
これは全てのガンに当てはまる事項ですが、早期がんであれば治療方法の選択の幅も広がり、経済的にも身体的にも、より負担の軽い治療を行なうことができます。
そのためにも、常日頃から体の違和感に対して意識を向け、何らかの不調を感じることがあれば、我慢せずに病院で検査を行なうようにすることが大切です。また、定期的な健康診断や定期健診を受けることで、ガンの早期発見に繋げることが可能となります。
この記事の冒頭でも少し触れましたが、リンパ節転移が無く、粘膜下層に留まっているガンであれば、治療成績や予後が悪いと言われている食道がんであっても、手術による切除を行なえば、5年生存率は80%以上になるといった統計もあります。
食道がんの治療法
一般的な食道がんの治療方法としては、以下で紹介するものがあります。
- 内視鏡治療
- 外科手術
- 放射線治療
- 化学療法(抗がん剤治療)
上記4つの治療方法を中心に、患者のがんの進行度や身体の状態を考慮して、最適な治療法を決定していきます。また、ガンの進行具合によっては、これらの治療法を組み合わせて行われる場合もあります。
内視鏡治療
患者への体の負担が少ない治療法として、内視鏡治療があります。切開する範囲も少なく、手術にかかる時間も1時間程と少なく、翌日から食事を行なうことも可能といったメリットがあります。
しかし、内視鏡治療で行なわれるのは、リンパ節転移の無い「表在癌」などの早期の食道がんに限定され、腫瘍の大きさや範囲によっても適応条件が変わってきます。
外科手術
病巣部である食道、ならびに転移の可能性のあるリンパ節を手術で切除する治療法で、切開による外科手術としては一般的な治療法となります。
切除範囲が広く、手術時間も長くなることから、患者の体に掛かる負担は大きなものとなります。また、体力的に手術に耐えることが出来ないと判断される場合もあり、手術を行なうことで予後不良となる可能性が考えられる場合は、外科手術は行なわれません。
放射線治療
がん細胞にX線などの放射線を照射し、病巣部を直接叩く治療方法です。根治を目的とする場合の他に、がんによる痛みを和らげることを目的とした対症治療的なケースでも行なわれます。
外科手術を伴わないので、肉体的な負担は少なくなりますが、それでも皮膚炎や嘔吐、下痢、食欲の低下といった体調不良を伴う副作用が生じる可能性が高くなります。治療は主に入院して行なうこととなりますが、稀に外来で行なわれるケースもあります。
この放射線治療によってがんを縮小させ、患者の体力の回復を待って手術を行なうといった治療法も行なわれます。
抗がん剤治療(化学療法)
手術で切除しきれない癌があったり、放射線治療を行なうことができない部位に癌が転移している場合などに行なわれる治療法で、この治療法でも個人差はありますが、吐き気や嘔吐、食欲の不振、全身のだるさといった副作用が現れる場合があります。
放射線化学療法
放射線治療と化学療法(抗がん剤治療)を同時に行なう治療法で、患者の体への負担を抑えつつ、高い効果が期待できることから、手術を行なうことができない患者に対する治療法として注目されています。
食道がんを予防するには?
食道がんになる原因として「喫煙」「アルコールの摂取」「熱いものや辛いものの摂り過ぎ」等が挙げられますが、これらの習慣をできるだけ控え、さらに野菜や果物の摂取を心がけるようにします。具体的には、禁煙と禁酒、バランスの取れた食事を心がけ、刺激物等は控えるようにするといった具合です。
野菜・果物の摂取で食道がんの発生リスクが半減?
先ほど、果物や野菜の摂取を心がけると書きましたが、これは厚生労働省研究班が公表している統計調査で、「野菜・果物の摂取量が多い人程食道がんのリスクが低下する」という調査報告に基づいており、果物・野菜を食べているグループでは、これらをあまり食べないグループに比べて、食道がんによるリスクがほぼ半減したという結果が報告されています。